管理人

あめふら

Author:あめふら
二次創作のお話を書いたり、書かなかったり。
リンクはご自由にどうぞ。していただけるのなら喜んで。

何かありましたらこちらまでお寄せ下さい。
amefurashi00◇gmail.com
(◇→@)


目次
最新コメント
刊行
pixivで描いた漫画をまとめました。


『OVERCOLL2』 とらのあな
booth
制作
作ったものを売っています。


『レジンフィギュア・物部ハト』 とらのあな

リンク
吸血鬼と大彗星の魔法使い エピローグ
第十三章の続きです。未読の方は先に第十三章をお読み下さい。


 うららかな午後の日和、紫が濡れ縁で琴を丁寧に分解しながら点検しているところへ、緑色の瓶を抱えた藍がひょっこり声をかけた。
「紫様。紅魔館からワインが届きました」
 紫は柔らかく顔を上げると、
「あら素敵ね。ちょっと見せて。……あらあら。これはなかなか。藍、何かワインに合うようなお料理作れるかしら?」
「ワインかあ」
 藍はちょっと思案した後答えた。
「そうですね、材料があれば」
「じゃあお願いするわ。足りないものがあったら言って。うん。たまには洋酒もいいわね」
 紫はにっこり笑って、瓶を藍に返した。

  ◇

 香霖堂の薄暗い店の中、霖之助はカウンターで頭を抱えていた。
「……おかしい。先日の一件で香霖堂の知名度は間違い無く上がった筈なんだが……何故、客が来ない?」
「何を今更」
 壺の上に腰かけた魔理沙と、いつの間にか勝手にお茶を淹れて飲んでいる霊夢が同時に返した。
「そして何故君たちはここにいるんだ?」
「何を今更」
「何故だ……」
 深い溜息が聞こえたと同時に、入口のベルが鳴った。
「ごめん下さい。霖之助、いるか?」
 慧音が手ぶらでやってきた。霖之助はすかさず顔を上げ、いかにも嬉しそうな声で元気よく返事をする。
「もちろんいるとも。いらっしゃいませ、ようこそ香霖堂へ。この度は何をお求めで?」
「いや、客じゃないんだ」
「帰れ」
「ええっ!?」
 霖之助の豹変劇に半ば呆れたように霊夢が言う。
「……で、何しに来たのよ」
 慧音は気を取り直して、
「ああ、紅魔館からワインが届いてな」
 すると霖之助、魔理沙、霊夢が立て続けに、
「それなら家にも来たよ」
「あ、なんだ。家だけじゃなかったのか」
「神社にも何本か来てたわね」
 慧音は三人の顔を順番に見た後、ちょっと困ったような顔をして言った。
「里には樽で届いたんだ。いくつも」
「まじか!」
 魔理沙が叫ぶ。
「咲夜、頑張ったわね」
 霊夢がしみじみと言う。慧音は微笑んで、
「里のみんなで飲んで下さいってことなんだろうな。そういう訳でいきなりだけれど、今晩宴を開くことになったんだ。お前たちも都合がよければ」
 霊夢と魔理沙の顔がぱっと明るくなった。
「なに言ってんのよ。仕事キャンセルしてでも行くわよ」
「私も! 行く行く行く! 香霖も来るだろ!」
「あー、またの機会に」
 と、霖之助。
「こういう時くらい素直に来い!」
 と、魔理沙。

  ◇

 紅魔館の大図書館。小さな机に向かって、咲夜とパチュリーが相対している。机の上にはチェス盤があり、咲夜が疲れた顔で駒を動かしていた。
「……チェックメイト」
「何で!?」
 パチュリーが機敏に立ち上がる。そして盤をまじまじと見た後、どう足掻いても自分の負けであることを確認すると、
「あー、また負けたー! 咲夜、まさか能力使って無いでしょうね?」
「……使ってませんよ。単純にパチュリー様が弱いんです」
 咲夜は溜息交じりに答えた。
「お願い! もう一局! もう一局だけ!」
「……勘弁して下さいよ。もう十五局目ですよ? いつからそんなに諦めが悪くなったんです?」
 パチュリーは得意げに微笑むと、
「そうよ。私、ちょっとしぶとくなったの」
「しぶといのはいいんですけれど……」
 咲夜は再び溜息をつく。これではいつまでも捕まったままだ。相当手は抜いているのだが、それ以上に弱すぎる。早い所勝たせてあげないと。
「ええっと、ですね、パチュリー様。まず布陣が徹底的に間違っています」
「え、嘘っ!?」
 パチュリーは心底意外そうな顔をする。咲夜はややうんざりとしながら続けた。
「……駒の動きから確認しますよ? キングが全方向に一マス、ナイトがL字に飛んで……」

  ◇

「……ビショップが斜めで、ルークが縦横。クイーンがどっちも」
 レミリアの私室で、チェス盤を挟んでフランドールとレミリアが向かい合っている。レミリアに駒の基本動作を教わりながら、フランドールはそれを指折り確認する。
「どうしてキングよりもクイーンの方が強いの?」
 フランが訊ねる。
「キングが居なくなっても、残された者を護っていけるようにかしら」
 レミリアが答える。
「偉い人なんだね」
「さあね。それを決めるのは民衆よ」
 ステンドグラスから紅いカーテンを通して、柔らかい月光が部屋の片隅を照らしている。フランドールの過ごしていた地下室よりも簡素なレミリアの部屋。しかしそこに流れる空気は、優しく、柔らかく、秋の陽射しのように暖かで、少しだけぎくしゃくした、不器用な雰囲気が漂っている。
 見ていて微笑ましくなるような、始まりの雰囲気。

「……お姉様」
 不意にフランドールが真剣な顔をして、慎重に、探るように言った。
「ん?」
「私、外に出たい」
「駄目よ」
 即答だった。
「今の貴女じゃ、太陽に二秒と耐えられない。うっかり外に出たら夜明けと同時に塵になるわ」
「……」
 フランドールは寂しそうに目を伏せた。決まりきった法律を改めて確認しただけのような自然な諦観が、いつも通りに心を撫でていった。
 レミリアは目を閉じて、軽く息をついてから目を開ける。そして寝物語のように、語りかけるように続けた。
「少しずつ、慣らしていきましょう。まずは勉強することからね。時間はかかるけれど、今すぐは無理だけれど……。そのうち、咲夜にサンドイッチでも作ってもらって、バスケットにいっぱい詰めて……二人で日傘を並べて、散歩でもしましょう」
 フランドールの顔が、徐々に徐々に変わっていく。自分の耳を疑うように、暖かく解けていく。
「うん!」
 その時に浮かべた満天の笑顔を、レミリアは生涯忘れないと誓った。
 その時に浮かんだ幸福な微笑みを、フランドールはきっと忘れないと思った。

 夜が更けていく。




------------------------------------------------------------------------------------
                               終   20110927
------------------------------------------------------------------------------------
吸血鬼と大彗星の魔法使い | 【2011-09-27(Tue) 00:00:01】 | Trackback:(0) | Comments:(2)
コメント
読ませていただきました。
実のところ、マルクというのがどんなキャラか
分からないまま読み進めて、読破したあとで
検索してみたら……なんとまあ可愛らしい。

裏切りあり、死闘ありで、少し陰惨かな?
と思っていたのが一気に和やかになってしまいましたw

レミリアの格好良さが素晴らしく、
フランドールのヒロインっぷりもまた、
大したものでした。

面白かったです、ありがとうございました。
2011-09-29 木 21:21:47 | URL | たなかなつ #SFo5/nok [ 編集]

長編お疲れ様です
ところで某ろだにあげた香霖堂奇譚の5話は
こっちにはあげないのかな?

あめふらさんの話はどれもしっとりしてて好きです。

また続きを期待してますー
2011-09-29 木 22:03:52 | URL | ping #vXeIqmFk [ 編集]
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する