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吸血鬼と大彗星の魔法使い 第十一章
第十章の続きです。未読の方は先に第十章をお読み下さい。


 レミリアとマルクは見つめあったまま動かない。互いの視線を衝突させ、そのまま悠久の時が流れた。
 もっとも魔理沙がそのように感じただけで、現実には一秒もたっていない。それなのにこれほど時間が引き伸ばされて感じるのは、レミリアの抱える破格の怒気に気が付いてしまったためだ。
 どのような知識であれ、それを知る前と知った後ではものの見方は変わる。魔理沙は気が付くと、レミリアから目を逸らすことが出来なくなっていた。普段気にしないような指先の僅かな振動ですら怒りに震えているように見えたし、彼女の吊り上った紅い目はますます紅くどす黒く燃えている様に思われた。
 隣に侍る咲夜も負けず劣らずの憎悪を放っている。まるで尖った黒い釘を生きたまま人間に打ち込んでいるみたいな顔だ。視線だけで人を殺すと、いつかマルクがおどけて言ったが、まさに言葉と違わぬ彼女の表情を見るのは初めてだった。出来ることならば見たくなかった。目の前にいるのが本当に、自分の知る十六夜咲夜と同一人物なのか疑いたくなったほどだ。何をすれば人はこんな黒い感情を放てるのだろう?
 怖かった。心臓を氷で鷲掴みにされたような心地を覚えた。しかしそんな事態にあって魔理沙は、自分でも驚くほどの静けさで状況の変化を見ていた。というより、迂闊に声を上げたり、取り乱すことすら出来なかったのだ。かといって冷静な観察眼を保ち続けていたわけでもないから、魔理沙の心に浮かんだ言葉はただ一つ。
(なんだこれ?)
 睨み合った三人を前に、魔理沙はただ棒立ちになって空気に呑み込まれていた。

「んー」
 先に動いたのはマルクだった。マルクは二人分の殺人視線を浴びながら、まるで平素と同じ様子で笑った。常に人の心を和ませる彼の笑顔が、今回ばかりは心に届かない。魔理沙は初めて、今までただ単に長所と捉えていた彼の胆力を「異常だ」と感じた。
「誰から聞いたんだい? そんなこと」
 マルクはへらへらと、少し困ったように眉尻を下げる。
「見せなさい」
「駄ー目。ミステリアスを失ったら魅力急降下だろ?」
「見せろ」
 レミリアが有無を言わさぬ声で返す。小さな声がまるで槍のように耳に刺さる。この場にいたくないと魔理沙は切に思った。しかし移動しようにも、足が地面に根を張ったように動かない。心臓が破裂しそうだった。そのまま胸を突き破るんじゃないかと思った。
 そうするうち、周囲では幾人かの里人が彼女らの異様な雰囲気に気が付き始めた。遠巻きに、決して視線を合わせないようにレミリアを見つめ、こそこそと囁き会っている布ずれの音が聞こえる。連鎖は瞬く間に広場を駆け巡り、やがて大衆は静まり返った。彼らも魔理沙同様、殺気立てた吸血鬼の出現を前にして迂闊に口を開くことも、何か動作をすることも許されなかったのだ。
 誰もが疑念と不安の混じった奇妙な表情で、マルクと、レミリアと、人間二人を見ている。彼女らを中心に眼の壁が出来ていた。
「うわー、怖い顔。レミィどうしたのサ? なんか普段と違うぜ? ほら会場も凍っちゃったし」
 マルクは心底困った顔で、助けを求める様に魔理沙に目をやった。何故こっちを向く? 見られた魔理沙はマルクの倍以上に困った顔で返した。
 しかしその無茶な振りのおかげで、一瞬頭からレミリアが消え、魔理沙はほんの僅か心にゆとりを取り戻した。なんだこれ? なんでこんなことになっているんだ? レミリアはどうして怒っているんだ? 気を紛らわすように必要以上に周囲を見回して、故に魔理沙は誰よりも先に、広場へ向かって歩いてくる二つの影に気が付いて大きく目を見開いた。
「慧音!? 香霖!!」
 魔理沙の声に里人全員の金縛りが解けた。皆が一斉に振り向いた視線の先には、この二週間依然として行方の知れなかった慧音と、その下手人と疑われ監視下にあった霖之助が粛々と歩いてくる。
 大きなどよめきが起こった。張りつめていた空気が萎むように裂けていった。
 魔理沙は叫んだと同時に駆け出していた。人波を思い切り掻き分けて二人の前に飛び出すと、そのまま霖之助の胸へ飛び込んだ。霖之助は少し驚いた顔をした後、わしわしと魔理沙の頭を撫でた。魔理沙は思わず涙が出そうになるのをなんとか堪えて、感極まって声を出すことも忘れて、自分の中に絡まっていた様々な感情を、瞳の奥に込めて目一杯彼を見上げた。霖之助は普段通りの優しい顔で返した。ああ、こんなに人を安心させる微笑みがあるのか! 再び涙が出そうになった。けれど、泣き始めたらきっと止まらないだろうことが解りきっていたから、魔理沙は必死に笑顔を作って、幸せな太陽のような顔で霖之助に答えた。
 二人の様子を微笑ましく見守っていた慧音にも、魔理沙は笑顔を向ける。この二週間一体どこに隠れていたのか、何をしていたのか、何があったのかなど、聞きたいことはあった筈だがもうどうでもよくなった。ただ変わらずあり続けていてくれることが嬉しい。
 慧音は魔理沙の頭を軽く撫で、そして里人へ向き直り、軽く下唇を噛んで、泣きそうな顔で一心に頭を下げた。

「おおっ! 先生! 生きてたのか!」
 広場の真ん中から頓狂な声が聞こえる。と同時に慧音の顔がびくりと強張った。慧音はぎゅっと目をつぶって、深く時間をかけて呼吸すると、突然何か決意をしたような強い目でマルクを見据え、彼に向けて一直線に歩き出した。
 里人は再開を喜び合う間もなく、当惑しながら彼女の勢いに道を譲り、その姿はさながら海を割るモーゼのようだ。
 慧音の一歩後ろを霖之助が付いていく。魔理沙は小さな子供がするように、霖之助の袖口をつまみながら彼に連れ立って歩いた。慧音らの動きに合わせて、里人の顔が波のように動くのを、魔理沙は少し面白いと思った。霖之助の登場で、魔理沙の心にはそのくらいの余裕が復活していたのだ。と同時に疑念も帰ってきた。一体、何があったのだろう? どうして香霖が慧音と共にいるのだろう? これから何が起ころうとしているのだろう?
 それは里人たちも同様である。吸血鬼の放つ冷たい空気からは解放されたが、その多くは不安な表情を浮かべたままだ。探し続け、半ば諦めかけた慧音の出現は、当然心から嬉しく思う。だけれど、今にも吸血鬼が事を起こそうとしている、このタイミングで何故?
 慧音はマルクの前で足を止めると、腕を組みながら冷たく言い放った。
「お蔭様で二週間ゆっくりと養生させてもらったよ」
 魔理沙を含めた里人の全員がぽかんとして首を捻った。マルクは心底嬉しそうに、
「それは何より。いやー探したんだぜ。みんなで一緒にサ。今までどこにいたんだい?」
 と、一歩慧音に近づこうとした瞬間、背後の空間が裂けた。瞬きの間に藍と霊夢が飛び出し、後ろから頸を掴むような形で、藍は爪を、霊夢は針を光らせる。
「おっと動くな」
「下手な真似したら針千本呑ますわよ」
 マルクはやれやれと首を振った。
「それ、キミが言うと滅茶苦茶怖いな。ええと、そっちの、もさもさしっぽの人は誰? 初めましてだよね?」
「八雲藍だ。よろしく」
「マルクです。よろしくー」

 なんだこれ?
 突然の出来事に魔理沙は完全に置いてけぼりを喰らっている。自分なりに状況把握を試みたのだが、結果わけが解らなかった。里人たちも同様だ。どういう反応をすればいいのか自信が無い。何かが起こっているのは解るのだが、何が起こっているのか解らない。
 慧音は腕を組んだまま唇を固く結び、霖之助も眼鏡の奥から鋭い視線を覗かせている。殺気立った吸血鬼とその従者に加え、九尾の狐と博麗の巫女が道化の首を捻じ切らんと構えている。
 にもかかわらず当のマルクは楽しそうにほほ笑んでいるのである。そのため、これが果たして真剣な出来事なのか、それともお遊戯なのかが判別付かない。状況と表情が一人だけ合致しないのだ。彼を取り巻く他人の空気が張りつめているだけに、全体としては滑稽ですらある。
 まさかこれもパフォーマンスの一部ではないだろうか?
 違うと解っていても、魔理沙はしばらくその考えに取りつかれた。
「……お、おい! ちょっと待てよ! 状況が理解出来ないんだけど? どういうこと?」
「簡単な話よ。慧音がいなくなったのも、フランが姿を消したのも、みんなこいつの仕業」
 霊夢が抑揚のない声で言った。
「……えっ?」
「みんな聞いてくれ」
 慧音が里人を振り返った。視線が一点に集まる。
「私はこの二週間、八雲紫の屋敷に匿われていた。そこで療養していたんだ。というのも、紅魔館の地下室で、マルクがフランドールを丸呑みにする歴史を見てしまったが為に、危うく奴に殺されかけたからだ」
 一瞬の沈黙を挟んで、会場は大きくざわめいた。
「え? いや、そんな……嘘だろ……?」
「魔理沙、覚えてるかしら? 夜中に結界をガンガン叩きまくった奴がいて、朝まで修復してたって話。あれ、フランが消えたのと同じ夜よ。ついでに言うと、結界が乱れたのは紅魔館の上空」
 霊夢の台詞を藍が引き継ぐ。
「大方、フランドールを吸収した後、即刻幻想郷から立ち去ろうとしたんだろう。けれど思いのほか結界が強力で外に出られなかった。違うか?」
 咲夜の顔色が変わった。全てに合点が言った。あの時か! あの夜か! 湖畔で夜空を見上げていたあの時! あの時から既に、こいつは演技を始めていたわけか。それとも初めからか。いや、そもそも演技だったのか。奴の本質はきっと救いようのない鬼畜性だ。やはり私の直感は間違っていなかった。最初に会った時から奴はいけ好かなかった。今となっては何を思っても遅いが、それでも、ああ、こいつは殺しておくべきだった!
 里人の視線が道化師を見るそれから、凶悪な犯罪者を見る目に変わり始めた。しかしマルクは表情を崩さない。ここまでくると感情が欠落しているのか、それとも負けを認めて腹を括っているのかとしか思えない。
「ああ、あのバリアは凄かったねえ。誰が作ったのかは知らないけど、もし知り合いだったら『素晴らしい』って伝えておいてくれない?」
「それはどうも。でも、あんたもなかなかよ。本当、檻の中で猛獣が暴れるみたいに」
「もう少しで亀裂が入るところだったしな」
 藍の言葉にマルクは驚いて、
「じゃあ、あのまま頑張ってれば外に出られたのかな?」
「まさか。うちの結界なめんじゃないわよ。」
「それは残念」
 あまり残念そうには見えないマルクを睨みつつ、慧音が言う。
「結界を越えられないことが解って、お前は引き続き紅魔館に居座ることに決めた。けれどフランを隠したのが自分だと発覚したらまずい。なにせ相手は吸血鬼だものな。ばれたら殺されるなんてもんじゃない。そこで私が邪魔になったんだ。呼び出して、過去を見る能力を確認して、消しにかかった。実際死ぬ寸前だったが、まさか逃げられるとは思っていなかっただろ? まあ本当にギリギリだったけれど」
 そこへ魔理沙が口を挟んだ。
「……え? ちょっと待て! こいつも里人と一緒になって慧音を探してたじゃんか!」
「止めを刺すためでしょ」
「!!」
 霊夢の台詞に魔理沙は色を失くした。

「……香霖堂さんが捕まったのは?」
 今まで口を閉ざしていた咲夜が、いやに落ち着いた声で尋ねた。
「ただのとばっちり兼スケープゴート。里人が勝手に盛り上がって勝手に裁いて勝手に沈静化してくれればラッキー。一度騒ぐだけ騒げば、みんな割とすっきりするからね。ついでに処刑でもしてくれてたら最高だ。慧音へのこの上ないプレッシャーになるから。まあ『やらないよりはましかな?』程度の認識で、その結果がどうなろうと知ったこっちゃ無かったと思うよ。多分、帽子を持ち出した時に即興で決めたんだろう」
「帽子……って、慧音の帽子?」
 魔理沙が訊くと、慧音は頷き、帽子を取って見せた。
「そう。これ、香霖堂から出て来たんだってな。でも私はこの帽子をな、紅魔館に置いてきた筈なんだよ。香霖堂から出てくる道理が無いんだ」
「ええっ!!」
 霖之助が感心したように、
「床の血を見て一瞬で悟ったんだろうな。僕が慧音を匿っているって。そこで試しに帽子を持ち出してみた。いやあ、よく実行したもんだよ。これ、一つ間違えれば自分が疑われるのに。でも僕は反論もせず、逆に一切の口を閉ざした。ということは、帽子がそこにあっても不自然でない状況、つまり慧音が香霖堂に逃げ込んだのは確定的だ。そして店主は既にある程度の情報を握っている。ならば下手に接触するよりも隔離させてしまえ、と。多分、僕が連行されてから、香霖堂の周りとか滅茶苦茶探したろう?」
「探した探した! 全然見つからなかったけどね、先生」
 そこで魔理沙は、はっと思い出した。そうだ、あの雨の日、マルクは何故か香霖堂にいたのだ。
「商品を勝手に持ち去ったりしてないだろうな?」
「いや、それはしてないサ」
「ああ、ならいいよ」
「……あのさ」
 と、魔理沙が口を出す。
「香霖が沈黙していたのって、里の混乱を避けるためじゃ無かったのか?」
「それもあった」
「一番の理由は、私が脅されていたんだよ」
「何て?」
「口外したら里の人口を半分にまで減らすってな」
 魔理沙はぽかんと阿呆のように沈黙して、しばらく口が利けなかった。
「はあっ!?」
 たっぷり時間をかけて叫んだ。続けて咲夜が、呆れたように訊ねる。
「……信じたんですか、そんな滅茶苦茶な話」
「やりかねないと思ったんだ。顔色一つ変えずにな」
 と、慧音はマルクを睨みつける。それに合わせて咲夜も、里人たちもマルクを見る。魔理沙はまだぼんやりしている。
 不安と怒りと嫌悪の混じった視線を一斉に受けて、マルクは今日初めて露骨に困惑した顔を見せた。
「やれやれ。そういう話をこんな大勢の前でされたらサ、ボクもう人里に来れなくなっちゃうじゃん」
「当たり前だろ」
「ていうかまだ居座るつもりしてたのね」
「お前を受け入れるつもりは無いぞ」
「お嬢様、こいつ、解雇します。構いませんね?」
 立て続けに鋭い言葉を浴びせられて、マルクはいかにも不満そうに頬を膨らませる。
「えー。そりゃないよ。ボク、紅魔館も人里も結構好きなんだぜ?」
「芸人は一つ所に留まっているものじゃないさ。行動が早いのは結構だけれど、急きすぎたな。慧音を逃がした時点で君の負けだ」
 霖之助が言うと、マルクは溜息をついて、
「本当にそれはミスだったよなあ。仕留める自信はあったんだけれどサ。種明かししてくれない? 先生の本当の能力って何だったのサ? ただ過去を見るだけじゃ無いんだろう?」
「教えるものか」
「それは残念。じゃあ古道具屋さん。先生をどうやって隠したのサ? 八雲さんの家って近所なの?」
「教えるものか」
「えー」

「……なんでお前、そんなにへらへらしてんだよ?」
 魔理沙が顔を伏せたまま震える声で言った。
「なにが?」
 と、魔理沙がマルクに掴みかかった。
「フランはさ、お前が来てから毎日楽しそうだったって聞いたぞ? 遊び相手が出来て、話し相手が出来て、本当に嬉しそうだったって聞いたぞ! それを……喰ったってどういうことだよ! 何考えてんだよ!」
「いや、ちょうどよかったし」
「ふざけんな!! なんだよそれ!! 他に言うこと無いのかよ!! なんにも思わないのかよっ!!」
「魔理沙やめなさい。話が通じる相手じゃないわ」
 霊夢が魔理沙を引き剥がした。魔理沙は悔しそうに歯を食いしばったままマルクを睨み続ける。次から次へ怒りが込み上げてきた。何故こんなことが出来るのだろう? どうしてここまでフランドールのことを軽く扱えるのだろう? こんな奴だったなんて! こんな奴だったなんて!
 魔理沙を宥めるようにマルクが言う。
「はいはーい、ちょっと落ち着こうね。そんなに難しく考えるなよ。フランよりもボクの方が強かったってだけサ。そんなに怒られるようなことじゃないぜ?」
「そういうことを言ってんじゃねえよっ!! フランが……フランがどんな気持ちでお前と一緒にいたか考えたことあんのか!!」
「やめなさいって」
「んー、キミ、何言ってるのサ? 別にキミがフランじゃないだろ? ほら、機嫌直しなよ。ていうかキミが怒る必要全然無いじゃないか。だって四百九十五年間も閉じ込められてた吸血鬼だぜ? そんなのいないのと一緒じゃん」
 突然破裂音と共にレミリアの立つ地面が爆ぜた。
 礫が舞い、周囲にいた人間は何が起こったのか解らないまま、衝撃に吹き飛ばされる。肌を焼くような殺気が、烈風のように通り過ぎていく。土煙が晴れた時、人々はもれなく凍りついた。
 レミリアが身の丈の倍はありそうな紅い槍を構えていた。
 里人の多くは本能的に視線を外した。彼女の怒りを体現したようなぐらぐらと燃える巨大な槍は、見ただけで生命の危険を感じさせるのに十分だった。しかしそれ以上にレミリアの鬼のような眼が強烈な恐怖心を焼き付けた。青白い肌が抱える槍と強力なコントラストをなし、爛々とした鬼灯のような眼が憎悪に眩んでいる。彼女の眼を直視してしまった者は、皆一瞬だけ死に触れた。
 それでも会場がパニックにならなかったのは、声一つ、呼吸すらままならない極限の緊張状態のせいと、博麗の巫女が吸血鬼の傍で変わらず平静を保っているという、ほんの僅かなの心の支えが、彼らの精神を砕ききらなかったがためだ。
 今この場で平常心を保っているのは、霊夢、藍、咲夜の三人のみ。もっとも咲夜は初めから殺気に満ちている。慧音と霖之助は互いに引きつった顔で、魔理沙はすっかり血の気が引いてしまって、足が震えて折れそうになるのを、霊夢にしがみつくことで何とか姿勢を保っていた。
「え? レミィ何それ? 手品?」
 流石のマルクも冷や汗をかいている。初めて彼がまともな反応を見せたような気がした。
 レミリアは無反応だった。それが嵐の前の静けさであることは周知の事実だった。爆発寸前のレミリアを、霊夢が呆れたように見やった。
「レミリア。里の中で暴れたらどうなるか解ってるんでしょうね?……ああ、ところで藍? 今、人里には実験的に結界を張ってるんだっけ?」
「ええ。ちょっとしたものですよ。例えば里の上空で吸血鬼が全力で暴れてもこっちには余波一つ無いでしょうね」
 マルクが苦笑いを浮かべた。
「……えげつねー。いや、吸血鬼との戦闘って避けたいんだけれど。とりあえず謝ろうか? えーっと、何がいけなかった?」
「全てだ!!!!」
 叫び声と共に、レミリアの姿が紅い残像を残して消えた。



第十二章へ続く
吸血鬼と大彗星の魔法使い | 【2011-09-05(Mon) 00:00:00】 | Trackback:(0) | Comments:(0)
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