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あめふら

Author:あめふら
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吸血鬼と大彗星の魔法使い 第六章
第五章の続きです。未読の方は先に第五章をお読み下さい。


「すいませーん、紅魔館の使いの者ですけどー、先生ー。いるのかー、いないのかー?」
 早朝から寺子屋の前で大声をあげるマルクに、通りがかりの男が声をかけた。
「おや、大道芸さんじゃないか。先生に何かご用かい?」
「ああ、紅魔館からのお使いでサ。ちょいと来てもらう約束してて。でもいないみたいだねえ。んー、どこに行ったんだろ」
 男は首を捻った。
「いやいや。先生なら昨日、紅魔館に出かけて行ったって聞いたぞ?」
 マルクも首を捻った。
「来て無いよ? だから迎えに来たんだけど」
「はあ?」
「迷子かねえ」
「んなこたないだろ。……っておい、本当に先生いないの?」
 男は構わず中を覗き込むと、腕組みをしたまま、表情を強張らせた。どうやら本当に留守らしい。
 しかし彼女が約束を反故にするとは思えない。紅魔館に行くと言ったのだから、きっと寄り道せずに紅魔館へ行った筈なのだ。それなのに目的地に到着していないとすると? あまり考えたくないが、悪い想像しか出来ない。男の心にみるみる暗い雲がかかっていった。
「……いや、おいちょっと待てやべえぞこれ、みんなに伝えねえと。大道芸さん、悪いけどついて来てくれるか」
 深刻そうに言う男にマルクはきょとんとして、
「え、なに? 大変なの?」
「ああ、大変だよ。ありがとう、よく知らせてくれた。おーい! 大変だ! 先生がいなくなった!!」
 情報は一目散に里を駆け回り、僅か一刻の後には主要な里人全員の知るところとなっていた。

  ◇

「『内密に相談したいことがあります。本日正午、森を抜けた先の湖畔でお待ちしています』……怪しすぎるだろうこれ。慧音もよく行く気になったな」
 慧音の持っていたという手紙は血で張り付いていて剥がすのに難儀したが、幸い文字は滞りなく読むことが出来た。
 霖之助は読みながら内心溜息をついた。まったく、あの子はお人好しすぎる。
「それは紅魔館のネームバリューでしょうね。手紙が偽物でも無視できる存在じゃないから」
 紫が覗き込むように言った。
「偽書なのか?」
「正式に出されたものではありませんわ。館主の署名が無いもの」
 霖之助は手紙を矯めつ眇めつ、
「でもこの紙は紅魔館で使われている本物だよ。見覚えがある。てことは吸血鬼の住処から紙だけ盗み取ってきたのか。凄いな」
「あら。やろうと思えば出来ますわよ」
「そりゃあ君はね」
「お二人とも、吸血鬼が犯人だとは思われないのですか?」
 藍が口を挟むと霖之助は首を振った。
「思わない。吸血鬼が相手だったら万に一つでも慧音が生きてるわけ無いし、まして逃げられるなんて考えられないさ。それに、まあ安っぽい言い方だけれど、レミリアはこんなことをする子じゃあ無いと思うんだ」
 もちろん確実にそうだと言い切れる根拠があるわけではない。が、霖之助は自分の直感を信じてみることにした。紫もそれに同意したらしい。
「そうね。やるにしても、レミリアだったらもっと派手で解りやすい方法を使うわ。湖畔でこっそり待ち合わせ、なんてしないわよ。紅魔館に直接呼ぶでしょう」
「レミリア・スカーレット当人ではなく、従業員の誰かということは? 館に勤めていれば紙を抜き取るのも容易でしょうし」
「あの子だって、そこまで統率力が無いわけじゃないわ。従業員自ら館の格を下げるような振る舞いをするかしら。まあ、ひょとしたらするのかも解りませんけれど、あの心酔したメイド長を前にしてそれが出来る度胸を持った人は、あの館にはいないわよ。紙の入手経路はあまり問題にしなくていいんじゃないかしら。紅魔館だって不落の城塞ではないのだし、紙一枚くらい、難しいけれど、でもやろうと思えば出来ますもの。或いは館に出入りする誰かにちょっと頼んだのかもしれないし、それかもうずっと前から何かに使うつもりで用意していたのかもしれません。だからむしろ彼女たちは利用された立場じゃない? 手紙に紅魔館の名前が使われたのは、その方が便利だったから。仮にワーハクタクが殺されかけたことが露見しても、相手が吸血鬼ってことになれば、里人には手の出しようが無いでしょう?」
「狡猾ですね」
 藍が言った。彼女もレミリアが犯人だと本気で疑っていた訳ではないのだ。
「でも、これは悪手よ」
「えっ?」
 藍と霖之助が同時に振り向いた。紫は上品な家庭教師のような口調で、
「さて問題です。ワーハクタクを亡き者にすると、どんないいことがあるでしょうか?」
 二人は顔を見合わせて、各々少し考えてから、
「単純に、人里へ侵攻しやすくなりますね。まあ今更何をって感じですけれど」
「……ああ、そうか、歴史を操作されなくなるんだ」
「その通り」
 紫はにっこりした。霖之助はちょっと嬉しそうに口角を上げ、藍は納得したように頷いた。
「恐らく問題視されたのは、歴史編纂能力に付随するサイコメトリー。ね? 『見られたら困る過去を持っています』と言っているのと同じでしょう? こいつは自分の仕出かした何らかの出来事を徹底的に隠蔽したがっているの」
「じゃあ慧音を取り逃がして今頃真っ青だな」
「そうね。彼女を殺せなかったのは最大のミスですわ。私ならば絶対に逃がさぬような策を練ります。そうしなかったのは果たして、時間が無かったのか、油断していたのか、或いはワーハクタクの能力を正確に把握していなかったのか。何にせよ、もっと慎重になるべきでしたね。隠すことを目的として、結果見つかるようじゃあ世話がないわ。ていうか『過去の抹殺』と『人里の安定』を秤にかけて、迷わず自分の保身を取るような出来事だったら、遅かれ早かれ露見するわよ。ならもういっそのこと行動しない方がましよ。下手に動かなければ発覚を遅らせるくらいは出来たかもしれないのに。そういった意味で、こいつは馬鹿よ。幻想郷のことをよく解っていない馬鹿。それか幻想郷のことを何とも思っていない馬鹿。けれどそれを補うだけの実力と自信があるのね。この場合は過信でしょうけれど、やりすぎない慎重さも少しは持ち合わせている。きっと元々の性格は悪戯好きで子供っぽいはず。んー、でもそれだと該当者がちょっと多いわね。まあ全部推測ですけれど。さて、相手はこれからどうするのかしらね」

 大人しく聞いていた藍がぼそりと言った。
「……こうして紫様の耳に入ってしまった以上、破滅は秒読みなんでしょうね」
 霖之助は深く同意した。
「ああ。君が敵でなくて本当によかった」
「あら。これくらいなら、ちょっと考えれば誰でも解ることですわ」
 きっと「那由他」とか書いて「ちょっと」と読ませるんだろう。改めて霖之助は紫の底知れなさを思い、溜息をついた。彼女と比べると自分はなんと小さな人間だろうか。謙遜ではなく事実そうなのだろうが、自然と卑下してしまうのはあまりいい気持ちではない。せめて何か行動したいと思った。彼女ほどの事は出来なくても、自分にもやれることはあるはずだ。
「紅魔館の図書館から借りてる本があるんだ。返しがてら一応様子を見てみるよ。君たちが行くと身構えられるだろう?」
「そうね。お願いするわ」
 紫は素直にその提案を受けた。
「ワーハクタクのことは任せて下さい」
 藍が勇気付けるように言った。実際、彼女に任せれば大丈夫だろうなという安心感があった。
「ああ、よろしく頼む」

 紫がしなやかに指を動かすと、霖之助の目に映っていた世界がぐらりと歪み、気が付くと彼は自分の店のカウンターに腰かけていた。

  ◇

 まず、体中の疲労を吐き出すように大きな息をついた。
 瞬間移動は便利だが、あの一瞬の浮遊感は好きになれない。霖之助はしばらく体を馴染ませるように首を回したり肩を動かしたりしていた。
 結局徹夜してしまった。窓を開けると刺すような陽光に思わず目が眩んだ。
 その後、紅魔館から借りっぱなしになっていた本を適当に積み上げていると、不意にドアベルが鳴った。どうせ魔理沙か霊夢であろうと思っていた彼は、そのどちらでもない、普通の里人の来店に度肝を抜かれた。
「お邪魔するぞ」
 現れたのは男が二人に、道化た身形の少年が一人だ。男の方はひどく真剣な顔をしていたが、少年は店に入るや否や、ほう、と声を漏らして興味深げにあちこち見回り始めた。どうやら本当に用があるのはこの二人で、少年の方はただ男たちにくっついて来ただけという感じだ。棚を見上げる少年を目の端で追いながら、彼はなかなか物を見る目があるなと思った。
「いらっしゃいませ。どうしました皆さんお揃いで? まさか団体客か。夢でも見ているのか僕は」
 霖之助が言うと、男は呆れながら、
「三人組を団体客と呼ぶ人を初めて見たぞ。普段の客入りが想像できてしまうじゃないか」
「少しでも同情する気持ちがあるのなら是非足しげくお通い下さい。それで、どういった物がご入用で?」
 すかさず二人目の男が答えた。
「いや、客じゃないんですよ」
「なんだと」
「まあ聞けよ」
 と最初の男が宥める。
「実は慧音先生が昨日の昼からいなくなってしまってな。今里人総出で探し回っているんだが……」
 まあ、そうなるだろうな。予想されたことだ。霖之助は驚いたふりをした。
「はあ、それは大変ですね。この辺では見かけなかったな。気が付かなかっただけかもしれませんが。いなくなったというのはどういう? 何かお仕事で泊りがけになっているのとは違うんですか?」
「ああ。そうじゃなくてな……」
 と、男は詳しい話をして聞かせた。霖之助は適当に相槌を打っていたが、突然もう一人の男があっと声を上げ話を中断させた。
「どうしました?」
「……香霖堂さん、この血は何だい?」
 大きく見開かれた男の目は、床に黒く固まった血の跡を凝視していた。もう一人の男も目を丸くして、霖之助のことを親の仇か何かのようにぎろりと睨んできた。
 そんなに睨んでくれるな。仕方ないだろう、碌に掃除する時間も無かったのだから。どう言い訳しようか頭を回転させていると、そこへ店の奥から飛び出した少年が追い打ちをかけた。
「ねえ、これ先生の帽子じゃないかい?」
「はあ!?」
 少年は釣った魚を見せびらかすように、ボロボロになった帽子を皆の前へ提示した。誰も黙ってそれを見ていた。そういえば慧音は香霖堂に現れた際、帽子を被っていなかったなと、霖之助は妙に冷静になった。てっきりどこかで落としたものだと思っていたのだが、彼女が消えている間に道具の中に紛れ込んだのか。
 少年にその帽子は店のどの辺にあったのか訊こうかと顔を上げたら、男二人が口を顎が外れるくらいに開き、霖之助をますます不審な目で睨んでいた。随分と滑稽な顔であったが、とても指さして笑える状況では無かった。
 霖之助は考える。まずいな。タイミングが悪すぎた。言い逃れが出来ない。かといって事実を正直に話せば、慧音を悪戯に危険に晒しうる。
 張りつめた空気の中、男がふと力を抜いて、呆れたような、それでいて今にも霖之助を殴り倒しそうな凄みを利かせて言った。
「香霖堂さん。俺は今まであんたのことを、怪しい場所に怪しい店を構えて怪しい物を売っている怪しい男だと思っていたが、まさかここまで怪しいとは呆れるを通り越して笑えるぜ」
「まあ、ちょっと落ち着いてくれ。言いたいことは解るよ? でも考えてみてくれないか。仮に僕が何かの事件の犯人だったとしよう。こんな解りやすい物証を残しておくはずが無いだろう?」
「じゃあこの血は一体何だ?」
「ちょっと性質の悪い偶然が通りかかってね」
「酷い言い訳だな」
「でも事実なんだ」
「じゃあ白状しろよ。ここで何があったんだ?」
「それは言えない」
 男は盛大に溜息をつくと仁王立ちになった。
「よし、とりあえず里に顔出せや」
「え、今からかい? 明日とかじゃ駄目?」
「いいから来いや!」
 カウンターの上に重ねた本をちらりと見て、わざとらしく困った顔をしてみたが、当然受け入れられる筈も無く、霖之助は男二人の手でずるずると引き摺られるように里まで連行されていった。
 引き摺られながら、こんな事態に陥っても、きっと紫ならば見事に切り抜けるのだろうなと思った。



第七章へ続く
吸血鬼と大彗星の魔法使い | 【2011-07-08(Fri) 00:00:00】 | Trackback:(0) | Comments:(0)
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