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あめふら

Author:あめふら
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吸血鬼と大彗星の魔法使い 第四章
第三章の続きです。未読の方は先に第三章をお読み下さい。


「よう、霊夢」
 魔理沙が博麗神社に遊びに行くと、巫女の博麗霊夢は恐ろしくぞんざいな態度で彼女を出迎えた。
「……ああ、おはよう、魔理沙」
「なんだその顔。寝不足か?」
 元々切れ目の霊夢だが、今日の彼女は更に睨むようで、魔理沙の太陽のような髪を眩しそうに眺めながら大きな欠伸でそれに答えた。
「……夜中にね。結界をガンガン叩きまくった馬鹿がいるのよ。それで藍と一緒に明け方まで修復作業よ」
 結界というのは幻想郷全土を覆い外の世界から隔離する博麗大結界のことで、博麗の巫女である霊夢はその維持管理を務めている。
「へー。お疲れだな」
 魔理沙が労うと、霊夢は再び欠伸で返した。
「……ということで今から寝るから、その箒で掃除でもしといて」
「げ」
 反論する間もなく一人取り残された魔理沙は、箒を握りしめながらどうしたものかと立ちすくんでいた。

  ◇

 人里で教師をしている上白沢慧音の下に奇妙な手紙が届いた。
 差出人は紅魔館とある。紅魔館というとあの吸血鬼か。吸血鬼が私に何の用だろう? 警戒しながら封を解くと、走り書きで「内密に相談したいことがあります」と書いてあった。
 ますます頭を捻った。

 慧音は結局、手紙の指示に従うことにした。
 指定された通りに真午の頃、魔法の森を抜けた湖の畔にやってくると、道化た身形の少年が切株に腰かけて足をぶらぶらさせながら慧音を待っていた。
「ああ、来た来た」
 少年は不思議な顔をする慧音の前にひょいと躍り出ると、カーテンコールのような大袈裟なお辞儀をした。
「直接顔を合わせるのは初めてですよね。初めまして。紅魔館の道化で、マルクと言います。近頃、里で大道芸をやってる奴と言えば解ってもらえるかと思います」
 大道芸と聞いてようやく慧音は、最近里で話題になっている芸人が目の前の少年と同一人物であることを悟り、緊張させていた頬を緩めた。
「ああはい、解りました。初めまして、上白沢慧音です。お噂は私の耳にも届いていますよ。様々な曲技曲芸をなさるとか。そうか、紅魔館の所属だったんですね」
「えー、先生とお呼びしても?」
「はい。口調も砕けたもので構いませんから」
「そりゃありがたい」
 彼の丁寧な態度に慧音は好感を持った。
「それで、私が紅魔館に呼ばれることになった理由を伺ってもよろしいでしょうか? 何でも、内密に相談したいことがあるとのことですが」
「その前に、先生は過去を見る能力を持っているって里で聞いたんだけれど本当かい?」
「過去と言うか歴史だけれど、まあこの場合は同じか。はい、出来ますよ」

 上白沢慧音は聖獣ハクタクの血が混じった半人半獣で、幻想郷内部の歴史の管理を任されている。そのために具わった能力の一環として、彼女の目は「その土地に起こった過去の出来事」を捉えることが出来る。

 マルクは慧音の回答に満足したらしく、一層の笑顔を浮かべた。
「相談っていうのは、その能力で調べてほしいことがあるのサ」
「というと?……ああ、予め断っておきますが、あまり他人のプライベートを侵すような内容だったら拒否させてもらいます」
「そうじゃないから安心してくれ。実は今、紅魔館が大変なことになっていてサ。これは公表していないことだから、先生一人の胸にしまっておいて欲しいんだけれど」
 と、窺うように慧音の顔を見た。
「解りました。決して他言はしません」
 はっきりした口調で言うと、マルクは例のにこにことした表情に戻り、
「レミィの妹のフランドールを知ってる?」
「妹がいるっていうのは知っています。面識はありませんが」
「彼女が行方不明になっちゃったんだ」
「えっ!?」
 マルクはさも深刻そうに声を潜めて、
「昨晩から館のどこにも姿が見えなくてサ。今必死に探し回っている真っ最中」
「そ、それはまずくないか?」
「そうなのサ。なんたって吸血鬼だもの。日光に当たったら一発アウトだぜ? 正直、もうどっかで灰になっているかもしれない。だらだらしていられないんだよね。ということで、こっそりと力を貸してほしいのサ」
「こっそりと?」
「実は先生を呼んだのはボクの独断なのサ。まー、紅魔館にも世間体とか何とか色々あるらしくてサ、紅魔館としては身内で処理出来ればそれが一番なんだ。まさか迷子の吸血鬼探しに人間の手を借りる訳にもいかないし、ていうか普通の人間は吸血鬼なんて助けようとはしないんじゃないかな? 人里にしてみても、吸血鬼が一匹逃げましたなんて知れ渡ったらパニックだろ?」
「なるほどな。……解りました。協力します」
 慧音は二つ返事で承諾した。由々しき事態である。万一吸血鬼が人里に迷い込んでいたら、悪意の有無はどうであれ大騒ぎになるのは目に見えている。
「正式な依頼じゃないからお礼とかも無いけれど」
「気にしませんよ。事情が事情ですから。さあ急ぎましょう」
「ありがたいなあ」
 マルクはにこにこしながら、落ち着き払って慧音を先導した。
 こういう事態に落ち着いて行動できるのは、きっと人が出来ているのだなと慧音は思った。

  ◇

 慧音を招くことはマルクの独断であるから、正面から堂々と館には入れない。湖を大きく回り込むようにして、二人は紅魔館の裏手までやってきた。
 里に住む身とあっては、紅魔館には元々あまり近寄らない上に、裏から見ることなど初めてである。後ろから見ても赤いなあと、慧音は館の名前を再確認しながら見上げていた。
 やがてマルクに手招きされて、一見して通れるようには見えない塀の隙間を潜り抜けた。進んでいくと背の低い扉があり、その先は湿り気を帯びた抜け穴のような通路が繋がっていた。
 マルクの手にはどこから取り出したのか小さなランプが握られ、慣れた様子で暗い通路を歩いていった。慧音は彼と逸れないように少し早足で付いて行った。湿気が体にまとわりつく。通路の壁には二人の影が怪物か悪魔かのように蠢いている。足元は石畳で歩く分には確かだが、暗く、長く、途中何度か道を曲がったようで、きっと一人でこの通路を歩いたら二度と日の目は拝めないだろうなと冷や汗をかいた。
「この通路は?」
 気を紛らわすために問いかけると、マルクはちょっと後ろを向いて、
「抜け道の一つサ。こういう館には、隠し通路がいくつもあるものなのサ」
「いいんですか? そんな秘密の通路を私みたいな部外者に使わせても」
「もちろん駄目サ。だから、くれぐれもこっそりと動いてくれよ? まあ従業員のほとんどが外に出ていて、今は館内もすっからかん状態だから、誰にも見つからないとは思うけれど、念には念を。咲夜さんにばれたらどれだけ怒られるか」
 マルクはからからと笑った。つまりそれだけの冒険をしてでも、フランドールのために行動したかったのだろう。慧音は俄然気合が入った。
「あなたはレミリアの妹と随分親しかったと見えますね」
「ていうかフランの姿を最後に確認したのがボクなんだよね。これでも責任感じてるのサ」
「大丈夫、きっと見つけますよ」
「心強いねえ。で、ここがその最後の目撃場所」
 マルクが一つの扉の前で立ち止まった。
「地下室?」
「そ。フランは普段ここで暮らしているのサ」
 慧音は面食らった。館主の妹だろう? もっと良い部屋に住んでいるんじゃないのか?
 これは複雑な事情があるのかもしれない。気合を入れなおすと、マルクに続いて部屋の中へと忍び込んだ。

  ◇

「静かだな」
 率直な印象だった。地下通路でも空気の流れる音くらいは微かに聞こえたのに、この部屋ではそれすらしない。気のせいかもしれないが、自分の声もいやに遠い。実際の部屋の広さと、空間的な音の響きが一致しない。
「フランが暴れてもいいように壁が特殊なんだってサ。叫んだくらいじゃ扉の外にも聞こえないし、爆発が起きたって煤一つ付かない」
 いよいよ複雑な事情がありそうだ。
 足の踏み場も無いほどに散らばる玩具の類や、やけに上等な調度品などが目に入ると、慧音は顔も知らぬレミリアの妹を心から哀れだと思った。
 要するにこの部屋は牢なのだ。ならばこの部屋に住んでいたという妹は、つまり幽閉されていたのだろう。実の妹を幽閉とは流石吸血鬼といったところか。
 自分は吸血鬼ではないので吸血鬼の感性など知りようもないけれど、ひょっとすると、この失踪は家出なのではないだろうか。自分を縛り付ける姉に対する、妹なりの精一杯の抗議なのではないだろうか。考えているとマルクが不意に訊ねた。
「そういえば、先生は紅魔館に来ることを里の誰かに伝えてきた?」
「ああ、ええと、すまない。数人に伝えたよ。里を離れる時は必ず行き先を残すようにしているんです」
「えー。内密にって手紙に書いたじゃん」
 マルクは口を尖らせる。
「すみません。こういう事態だと知っていたら何も言わずに出てきたんですが……」
「……んー……、まあいいや。後で考えよう。それじゃあ、先生の歴史を見る力とやらを確認させてくれ」
「解りました」
 慧音は目を閉じて、静かに意識を集中させていった。

  ◇

 マルクと並んで座った、赤い服の少女が見える。彼女がレミリアの妹のフランドールなのだろう。
 着ている物や髪に汚れは無いから、少なくとも世話は行き届いているのだろう。単純に閉じ込められていたわけでも無さそうだ。背中から伸びている蔦のようなものは羽だろうか。姉と同じ、血の色の目をしている。しかし肌はレミリアの方が白いと思う。

「……ねえマルク、紅魔館は好き?」
 フランドールはマルクに問いかけた。
「気に入ってるよ」
「よかった。みんなのことは好き?」
「んー、嫌いでは無いとだけ言っておこうかな。咲夜さんが怖くてねー」
 フランドールはふと真剣な顔になった。
「ねえマルク。私はマルクのこと好きだよ」
「ボクもフランのこと好きだよ」
 マルクが返すと、フランドールは優しく言った。
「友達だもんね!」
「友達だからね」

 慧音は他人の会話を盗み聞くようで少し恥ずかしくなったが、それ以上に驚いていた。
 フランドールからは、吸血鬼と聞いて想像するような恐ろしさが欠片も感じられないのだ。もちろんそれは、私が彼女を知らないだけなのかもしれない。だがこれは見た目相応の、思いやりのある子供の会話だ。好きなものを迷いなく好きと言える微笑ましさがある。精神状態も悪くないらしい。冷遇されていたにしては奇妙なくらいに穏やかだ。
 しかし、時々癇癪を起こすと言っていたから、ひょっとするとこれはマルクの前だからなのかもしれない。恐らくマルクは、フランドールにとって館の中で唯一の味方なのだろう。

「……ふふ。なんか友達って言うとむずむずするね」
 フランドールが照れくさそうに頬を染めた。
「ボクもサ。友達って呼ばれたこと無かったからなあ」
「それじゃあ、ひょっとして私たちって、お互いに最初のお友達同士?」
「そーだね」
「やったあ! お友達だあ!」
 素直な良い子じゃないかと慧音は笑みをこぼした。
「よし、それじゃあフラン。友達になった記念に、一つ手品を見せてあげよう」
 マルクがにこにこしながらフランドールの前に飛び出した。フランドールは嬉しくてたまらないといった風に目を輝かせる。
「本当! 見せて見せて!!」
「オーケイ。じゃ、まずは目をつぶって。いいって言うまで開けちゃ駄目だよ」
「解った。……えー、なにするのー? なにするのー?」
 彼女は言われた通り目を閉じると、そわそわしながらマルクを待った。
 見ている慧音もドキドキしてきた。これ、キスとかするんじゃないだろうか? 想像すると顔が真っ赤になった。このまま覗いていいものか真剣に迷った。

 マルクはフランドールにゆっくりと顔を近づけると、突然口をガバリと開いて、鰐が小鹿を丸呑みにするように、一瞬で彼女を呑み下した。

 最初、慧音はこれが手品なのだと思った。マルクが何らかの方法で、フランドールを消したのだろうと思った。
 しかし、いくら待てどもフランドールが出現する気配は無く、代わりに不気味な沈黙が辺りに漂っていた。
 徐々に慧音の表情から余裕が消えていった。ついさっきまで顔にのぼっていた血が一目散に引いて行った。

 何が起こった?

「……んー。よっと」
 突如、マルクの背から黒い蔦のような羽が飛び出した。藤のように下がった色取り取りのガラスが氷のような澄んだ音を立てた。
「……ああ、やっぱりこの羽が無いとしっくりこないな。うん」
 マルクは確かめるように二、三度羽を動かすと、手品のように羽を隠した。凶行を犯した直後にしては異様なくらい落ち着いていた。
「じゃあもうここに用は無いか。バイバイ、フラン。ま、許してちょーよ」
 軽く言い残すと、楽しげに、しっかりとした足取りで部屋を出て行った。

 過去の幻想の中で、慧音は一人立ちすくんだ。
 何が起こった?
 考えるまでも無い。実際に見たのだ。しかし頭の中では「まさか」の文字が躍り、慧音の理解を邪魔していた。

 フランドールは消えてしまったのではないのだ。
 彼女はマルクに喰われたのだ!

  ◇

 慧音の心に烈火の如く怒りが湧いてきた。勢いよく振り返ると、マルクが至近距離でにこにこと笑っていた。その笑顔がこの上なく不気味だった。慧音は本能的に距離を取った。頭は熱くなっているのに、背には冷たい汗が伝った。
 マルクは扉の前に陣取って泥のような笑顔を向けている。
 何だあの顔は? 何を考えている? そもそも何の為に私を呼んだんだ? 耳が痛くなるような沈黙の中で、慧音はふと、部屋に入ったときの会話を思い出した。
 この部屋では、何があっても外に響かないらしい。

 唾を飲み込む音が頭の中で異常に反響して、慧音は初めて、自分が怯えているらしいことに気が付いた。
 しばらく睨み合った後、マルクが聞く人の心を溶かすような安らかな声で、
「さて、先生。何が見えた?」
 と、にっこり笑った。



第五章へ続く
吸血鬼と大彗星の魔法使い | 【2011-06-23(Thu) 00:00:00】 | Trackback:(0) | Comments:(0)
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